虫歯を削らずに治すための歯磨きの基礎知識
今回は、『虫歯を削らずに治す!知って得する虫歯の基礎』でお話した内容の続きで、虫歯にならない為に重要な『歯磨き』についてお話します。
歯磨きについて
虫歯にならないために歯磨きが必要なことは、誰しもが知っている常識となっています。
では、なぜ改めて歯磨きについてお話するかというと、『歯磨きの仕方』ではなく、『歯磨きの必要性』について本当の意味で、理解する事が虫歯にならない為に効果があるからです。
このことは1994年の口腔衛生指導に関する論文で言及されています。
歯磨きをしないと、どうなるのか
1970年の文献では、12人に23日間の歯磨きを中止し、そのうちの6人は、1日に9回、糖によるうがいを行いました。
結果は、23日後には全ての人に虫歯ができ、糖によるうがいを行った6人は他の6人に比べ虫歯がより進行していました。
このことから、歯磨きをしなければ23日後には虫歯ができ、糖分が多いものを摂取していると、より虫歯が進行することが分かります。
後ほどお話しますが、実際には歯を磨かなければ1~2日で脱灰が始まりますので、その時点で虫歯になっています。
また、全員に虫歯ができていたことから、虫歯の直接的原因が、糖ではなく、歯垢やプラークなどのバイオフィルムであることも分かります。
歯磨きをすると何が起きるのか
結果からお話すると、虫歯の原因であるバイオフィルムを取り除き、歯が溶けて脱灰する原因となるpHの低下を防ぎます。
歯磨きに関する有名な論文で、Stephanの論文があります。
この論文は、成熟したプラークが付着している歯をブドウ糖液でうがいをすると、プラークの中のpHが1~2分で低下し、歯が脱灰し始めるのに対して、歯を磨いた後にもう一度、ブドウ糖液でうがいをしても歯は脱灰しなかったというものです。
ここから分かる事は、歯磨きをして、プラークがなくなれば、飲食を行っても、pHの低下を抑えられ、虫歯になりにくくなるということです。
磨き残しは何日経つと虫歯になるのか
磨き残しが2日を超えると、お口の中に糖が入ってきた際に脱灰が始まります。
また、1日目から脱灰が始まる人もいたことから、磨き残しがあると1~2日で虫歯になると考えられます。
1日に何回歯磨きをするべきか
答えは1日に2回以上です。
理由は、1日に1回以上歯磨きをする人は、そうでない人に比べて虫歯の発生が少なく、1日に2回以上歯磨きをする人は、2回未満の人に比べて虫歯の発生が少ない為です。
いつ歯磨きをすればよいのか
酸蝕症やドライマウスの有無、年齢によっても多少のタイミングの違いはありますが、一般的には、食後に行う事をお勧めします、その中で1日1回は丁寧に歯を磨く時間を取りましょう。
時間が取れない場合でも、1日に最低1回は歯磨きすることをお勧めします。
デンタルフロス、糸ようじは効果があるのか
私的には残念なのですが、デンタルフロスが虫歯の予防になるという十分なエビデンスはありません。
これは、歯と歯の間にできる隣接面う蝕の原因は、磨き残しだけではなく、噛み合わせや食いしばり、食事などにより生じた、歯の亀裂、ヒビが原因となっていることがある為だと考えられます。
歯にヒビが入ればデンタルフロスを使用しても、虫歯の発生を抑えることが難しくなります。
定期的に歯医者さんに行って、糸ようじも使って毎日磨いてるのに虫歯ができてしまうという方の中には、歯のヒビ、クラックによる隣接面う蝕によるものの可能性も考えられます。
では、デンタルフロスは必要ないのか?
答えは、必要です。
エビデンスはありませんが、虫歯の原因となる磨き残しの除去や歯周病の予防には欠かせないと考えますので、1日1回は適切なフロッシングをお勧めします。
まとめ
今回は、歯磨きがなぜ必要なのかと、歯磨きの回数やタイミング、デンタルフロスについてその根拠となる論文を元にお話しましたが、歯磨きの重要性を感じていただけましたか?
以前もお話しましたが、なぜ歯磨きが必要なのかを知り、自分のお口、歯に対して興味を持って頂けることが、歯ブラシの仕方を専門家に聞くだけよりも効果があります。
ですので、今後お話する虫歯に関する内容を読んで頂くことで、読んで頂いている方の虫歯を既に予防しているんだという思いで、今このブログを書かせて頂いております。
全ての虫歯を削らずに治すことができれば良いのですが、それは眉唾物です。
ですが、虫歯にならなければ歯を削る必要がないのもまた真実です。
みなさまのお子様やご家族の方の虫歯予防に少しでも貢献できればとても嬉しく思います。
最後まで、お読み頂きありがとうございます。