知って安心、インプラントの歴史
東急東横線『都立大学駅』から徒歩30秒の都立大学萩尾歯科クリニック院長の萩尾信輔です。
現在では基本的に治療方法も確立され成功率の高いものになっているインプラント治療。
しかし、現在のタイプのインプラントが臨床応用されたのはおよそ35年程前です。
意外にまだ日が浅いなという印象を持ちました。
ということで、今回は普段から行っているインプラント治療の歴史を深掘りしていきたいと思います。
医療は日進月歩
インプラントの歴史は紀元前まで遡り、貝殻などを歯の無くなった部分に入れていたとの事です。
インプラントには、骨内インプラント、骨膜下インプラント、歯内インプラントなどがあり、現代のインプラントは骨内インプラントを指します。
時は流れ、1952年にブローネマルクという医師が骨はチタンと結合することを偶然発見し、現在の本格的なインプラントの研究が進んでいきます。
その間に、1960年代に板状で窓が開けられているLinkonのブレードインプラントが登場し、長期間機能していました。
これと並行して、スウェーデンでは現在のインプラントの元となる、ブローネマルクのインプラントが1965年よりイエテボリ大学で進められました。
そして、1988年NIHのコンセンサス会議から、現代のオッセオインテグレイテッドインプラントの普及が進み、現在のインプラントのデザインに集約されました。
日本におけるインプラントの歴史
日本では1978年人工サファイアを使ったサファイアインプラントが開発されましたが、結果が良くないために使用されなくなりました。
その後日本にもブローネマルクのチタン製インプラントが入ってきました。
現在、日本で使われているインプラントは、やはり世界で長く臨床成績の高い物が選択されています。
国産のインプラントは臨床実績の少ないものもあるため、安全性を考慮して当院では世界的にもシェアが高く、私が使用して最も信頼がおけるCAMLOGインプラントを使用しています。
当院でのインプラントの歴史が垣間見える症例
当院には遠方からもインプラントのご相談でいらっしゃる方もいますので、インプラントの歴史が少し垣間見える症例をご紹介させて頂きます。
ブレードインプラント
こちらが1960年代に使われた板状で窓が開けられているブレードインプラントの実際の写真になります。
レントゲン像では大きな骨吸収が見られます。
来院時には、揺れが大きく、痛みもあったため撤去を行いました。
現在は吸収されていた骨も治癒し、元々のインプラント部位は入れ歯を作製し使用されています。
サファイアインプラント
こちらが日本で1978年に開発された人工サファイアを使ったサファイアインプラントの実際の写真になります。
透明のプラスチックのような物で、現在のインプラントとは形状は似ていますが、材質は全く違います。
被せ物が外れたため来院、サファイアインプラントが破折していたため撤去を行いました。
実際には2本のサファイアインプラントが破折しており、1本は撤去、1本はサファイアインプラントが感染しないように歯茎の中に隠す処置を行い、撤去したインプラント部位には再度インプラントを行うために撤去と同時に骨造成を行いました。
失われた骨を回復後、再度インプラントを行いました。

OGAインプラント
今ではほとんど見ないタイプのインプラントです。
私も当時このインプラントについて知識がなかったため、このインプラントを積極的に行われていた第一人者でもある先生にお話を伺いました。(現在は引退されていました)
このインプラントは1本1本が小さく、インプラントの一部が細くなっているため、細くなっている部位から破折している部位が数カ所ありました。
まだ使用できるインプラントは使用し、そうでないインプラントは撤去、スリーピングを行い対応しております。
このタイプのインプラントが、以前の治療で使用されていてお困りの方は、ご相談頂ければご対応が可能ですので、ご連絡頂ければと思います。
まとめ
今回インプラントの歴史を調べてみて、様々なトライ&エラーの元、現在のインプラントシステムが確立している事を改めて学びました。
また、今回インプラントの歴史を知ったことで、現在のインプラント治療の予知性の高さを感じる事ができ、私自身も安心して、インプラント治療をご提供出来ると感じました。
温故知新、歴史を参考に知識を学び同じことを繰り返さず、新しい知識を学び、より安全性と正確性を持ったインプラントを行っていきたいと思います。
当院ではインプラントの難症例も対応しておりますので、何かお困りの事があればいつでもご相談下さい。
現在も日々技術は進歩し、より安全により審美的により機能的に、お口の中で維持できるよう学び続ける事はとても大切だと思いました。