都立大学萩尾歯科クリニック
                   
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Dr.HAGIO's 歯科ブログ

歯科恐怖症改善の始めの一歩は知ることから

【監修・執筆】 萩尾 信輔
【監修・執筆】 萩尾 信輔 都立大学HAGIOデンタルクリニック院長・歯科医師

前回は、私の歯科恐怖症治療を行うきっかけをお話させて頂きました。
今回から2回に分けて、その経験を元に歯科恐怖症と嘔吐反射(異常絞扼反射)についてより詳しくお話します。

まずは、歯科恐怖症についてお話します。

 


歯科恐怖症(Dental phobia、デンタルフォビア)とは

様々な理由により、歯科治療に対して恐怖心が芽生え、歯科治療を行おうとする、もしくは考えただけで過去の記憶が蘇り、動悸や震え、頻脈、過呼吸、迷走神経反射、パニック障害などが起こり、歯科治療を行う事が難しい方のことを指します。

また、実際の症状は出ないが、歯科に対して恐怖心があり、治療を受けたくない方、通えない方も軽度かもしれませんが、歯科恐怖症だと考えられます。

2014年の調査では、日本国内の歯科恐怖症や嘔吐反射(異常絞扼反射)での歯科治療の受診困難者は、約500万人、およそ20人に一人が歯科治療を避けていると考えられます。

歯科恐怖症は、子供の頃は全く怖くなかったにもかかわらず、少しの事がきっかけで、突然、歯科恐怖症が発現してしまう方もいます。

歯科恐怖症は精神的な病ですので、薬などで完治させることは難しいです。

例えば、狭い所が苦手な閉所恐怖症や高い所が苦手な高所恐怖症、針などの先の細い物が苦手な先端恐怖症、野球でよく耳にするようになったイップスも精神的な問題が大きく、完治する事が難しく、うまく付き合っていく必要があります。


歯科恐怖症のきっかけを知る

恐怖症と聞くと、心の弱い人がなるものと思う人が多いかもしれませんが、全くそのようなことはありません。
これまで何の問題もなく普通に生活していた人がふとしたことで恐怖症に陥る場合もたくさんあります。

元々、音や匂い、光などに敏感だったり心配性だったりする人の方がそうでない人に比べて恐怖症になりやすいと言われています。

しかし、そのような特性の有無や程度に関わらず、強い苦痛を受けるような体験をすると、それがトラウマになってしまうことは誰にでも起こり得ます。

過去の辛い治療や痛みがトラウマに

歯科恐怖症の原因の多くは過去に受けた歯科治療で痛い思いをしたり、治療で怖い思いをしたことによる心の傷、心的外傷が原因になることが多くあります。

些細なことがきっかけに

麻酔で気分が悪くなった経験、治療台に置かれていた器具に汚れがついたままだったのを見たのがきっかけ、治療室の薬品の匂い、スタッフの対応態度が悪かったなど、過去の治療ですごく痛い思いをしたなどの明確なきっかけがなくても歯科恐怖症になることがあります。

音や、匂いの感覚刺激も引き金に

恐怖症のきっかけは過去の歯科治療での苦痛を経験したことであっても、恐怖を呼び起こすきっかけは過去の経験とは直接関係のない音や匂いだったりすることがあります。
治療が痛い痛くない関係なく、怖くなって治療が受けられない場合があります。

えずきやすい体質から恐怖症に

喉の奥に指を入れると誰でも吐き気をもよおします。
体に異物が入ってきそうになった時に排出しようとして起こる体の防御反応の一つなので本来はなくてはならないものです。

しかしこの反応が過敏すぎると歯科治療においては治療がスムーズに進める事ができないのです。
それにより、歯科医師にきつい対応をされたり、叱られたりという経験から治療に対する不安や恐怖を引き起こしてしまうのです。

また、歯科医師に対する申し訳なさから歯科医院に行けなくなるということもあります。

恐怖症を軽視され、傷ついてしまう

心の内では歯科医院へ行きたいという思いがあっても、緊張したり、院内に入れなかったり、人並みに歯科治療が受けれないという自己嫌悪に陥っているにも関わらず、周囲の人たちはその気持ちを理解されず、軽視されて傷ついてしまうこともあります。


私が考える、歯科恐怖症と上手く付き合っていく考え方と方法

どのような方でも歯科恐怖症になり得る

今回のお話からも、歯科恐怖症のきっかけを全て排除することはとても難しいことが分かります。

今回、私がお伝えしたいのは、どのような方でも歯科恐怖症になり得るということです。

そして、今、歯科恐怖症で悩んでいる方々に、同じように悩んでいる方がたくさんいる、ということを知って頂きたいと思います。
悩んでいるのは、あなた一人だけでは決してありませんので、安心して下さい。

担当の歯科医師に歯科恐怖症に関する悩み、苦手と感じていることを素直に話してみる

その度合いが、歯科医院にて対応出来るものであれば良いですし、対応が難しければ、症状が重くならないうちに静脈内鎮静法の対応可能な病院や、歯科恐怖症にも対応できる病院を紹介して頂いた方が良いです。

また、お話することで担当の歯科医師とコミュニケーションが取れますので、それによって精神的に安心出来れば、治療が可能になる場合もあります。

歯科恐怖症の度合いは様々ですが、精神的な側面が強いため、一度発症してしまうと簡単に劇的に改善する方法はありません。

自分自身の心の状態を把握し、上手に付き合っていく必要がありますし、それを担当の先生に知って頂く必要があります。

決して簡単な方法ではありませんが、諦めずに歯科治療を継続出来る環境を見つけて頂きたいと思います。


今回の最後に知って頂きたいこと

お互いの信頼関係の構築

歯科恐怖症の治療を行う上で、とても大切なことは、お互いの信頼関係です。
この信頼なしに歯科恐怖症の方への十分な治療は不可能です。

歯科恐怖症の方の治療を行っている病院は、治療を行う上で様々な準備をして臨みます。

静脈内鎮静法を行う場合はもちろん、通常診療であっても、スタッフの確保、予約時間など、より多く確保する必要があります。

このような事を考えると、全ての歯科医院が歯科恐怖症の方の対応が出来ないのも事実です。

ですので、自分が歯科恐怖症があるという前提で歯科治療を受ける場合には、お互いの信頼関係を保つためにも、キャンセルや遅刻などをせずお約束の時間をしっかり守る事、歯科治療を受ける前には出来る限りお口の中を事前に清掃し、きれいにしておく事をお勧めします。

このことは、歯科恐怖症の方に限らず、歯科治療を受ける全ての方に、歯科医院とより良い関係を築ける一番良い方法だと思います。

歯科医師も歯科衛生士も人間です、気持ちよく診療をしてもらった方が、自分にとって絶対にプラスです。

もちろん、全て歯科医院の言う通りにした方が良いと言っているわけではありません。

このようなことを、普段お伝えすることはありませんが、ほとんどの医療従事者がそう思っていると思います。

お互いの信頼関係が構築され、歯科恐怖症のきっかけが少なくなり、みなさんが安心して治療を受けられる歯科環境が増える事を期待して、今回のお話をおしまいにしたいと思います。

最後までお読み頂きありがとうございました。


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