睡眠時無呼吸症候群の治療が必要な大きな理由
前回、前々回と歯科と関連する、いびき及び睡眠時無呼吸症候群に関するお話をしました。
今回は、自覚症状が出にくく、疾患、病気として捉えづらく、現段階では治療介入までに至りづらい睡眠時無呼吸症候群が、なぜ治療介入が必要かについてお話して行きたいと思います。
睡眠時無呼吸症候群の合併症のリスク
ここにおける合併症とは、睡眠時無呼吸症候群がある事により、引き起こされる様々な病気、疾患になります。
睡眠時無呼吸症候群は、年齢、性別を問わず合併症としてさざまな病気を引き起こします。
子供では発達障害、注意欠如・多動症（ADHD；Atention Defict Hyperactivity Disorder)など。
大人では高血圧、冠動脈疾患、心房細動、脳卒中、２型糖尿病を合併する可能性があります。
２型糖尿病になるリスクは約1.5倍、高血圧は約２倍、虚血性心疾患は約３倍、脳血管障害は約４倍という報告があり、最悪の場合は突然死を引き起こします。
さらには、うつ病、逆流性食道炎、認知障害を悪化させます。
また、日中の眠気による機能障害がよく起こり、業績不振、失業、家族関係の悪化、全体的な生活の質の低下として現れます。
以上のように、睡眠時無呼吸症候群の治療を行わない事により、日常生活に限らず、命に関わる大きな病気を引き起こします。
なぜ睡眠時無呼吸症候群は全身疾患につながるのか
①睡眠中の低呼吸や無呼吸により酸欠状態が続くことで、交感神経の活動が活発になり、そのため血流も激しくなり高血圧を引き起こす可能性が高くなります。
②交感神経活性の亢進、酸化ストレスの亢進及び血管の炎症等が相乗的に作用し、心臓の働きを抑制します。
その結果、動脈硬化が進行して心筋伷塞や脳伷塞、脳出血を起こしやすくなります。
③無呼吸状態から呼吸が再開するとき覚醒反応を引き起こし、これら一連の障害が代謝異常につながり糖尿病のリスクを高めます。
④中途覚醒が頻繁に起こることで、睡眠サイクルが乱れると、自律神経のホルモンの分泌異常、免疫機能低下等を引き起こします。
睡眠時無呼吸症候群と聞くと、ただ単にイビキや寝ている間に呼吸が一時的に止まり、日中に少し眠くなる程度の認識の方が多くいらっしゃいますが、実は知らない間に身体に様々な影響を与えていることをお分かり頂けたと思います。
睡眠時無呼吸症候群などの睡眠関連呼吸障害が与える影響
現在、睡眠関連障害が及ぼす健康面、社会面、経済面への影響が明らかになり、特に日中の過度の眠気による労働生産性の低下、交通事故、仕事場での事故による経済的損失は大きな問題として取り上げられています。
また、睡眠時間と事故率の関係における研究では、睡眠不足による事故率は、飲酒運転の事故率とほぼ同じという結果が出ています。
このことからも、睡眠時無呼吸症候群を放置することの危険性が感じられます。
睡眠時無呼吸症候群の治療介入の有無による生存率
中等度以上の閉塞性睡眠時無呼吸を治療せずに放置した場合には、８年後の生存率は、治療を受けた患者さんと比較すると約６３％まで下がります。
まとめ
今回は、睡眠時無呼吸が身体に与える影響とそれに付随した事故などの健康面以外のお話もさせて頂きました。
睡眠時無呼吸を放置もしくは気付かずいることによって、生存率が６３％にまで下がってしまうことまで考えると、治療の必要性を感じて頂けたのではないでしょうか。
また、子供の場合には、ご両親や周りの方が普段の生活の中で、イビキや日中の眠気などから早期に気付いて対応することによって、その子の生活の質が全く違うものになりますので、気になった場合には、耳鼻科や歯科などの専門の機関にご相談頂ければと思います。
次回は、睡眠時無呼吸になりやすい人の見分け方と睡眠時無呼吸の検査方法についてお話したいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
