都立大学萩尾歯科クリニック
  • tel:0364595865
  • 都立大学萩尾歯科クリニックWEB診療予約
  • 都立大学萩尾歯科クリニックメール相談

【診療時間】10:00~13:30/15:00~19:30(土日 10:00~13:30/15:00~18:30) 休診日/祝日・日曜(一部休診)

Dr.HAGIO's 歯科ブログ

フッ化物製品を使う前に知っておきたい注意点

【監修・執筆】 萩尾 信輔
【監修・執筆】 萩尾 信輔 都立大学HAGIOデンタルクリニック院長・歯科医師

前回は、フッ素の働きや有益な点についてお話しましたが、今回は、フッ化物の不利益と考えられる点や、実際に保護者の方からも質問があったアナフィラキシーについてお話していきたいと思います。

虫歯予防に対するフッ素の有益な効果は、主にお口の中に歯が萌出してからのフッ化物の局所作用によるものです。

一方、フッ化物の不利益な効果は、歯の形成期における体内への吸収による歯牙フッ素症や骨フッ素症、また誤って大量に摂取してしまった場合の中毒などによるものです。

 

 


歯牙フッ素症と骨フッ素症


歯牙フッ素症は斑状歯とも言われ、歯の表面に白い斑点や色素の沈着が見られるようになる病気で、歯の形成期における体内へのフッ素の吸収によって起こるものです。

乳歯のエナメル質は、子供が胎内にいる間に作られますので、乳歯が歯牙フッ素症になることはありません。

しかし、永久歯のエナメル質は乳幼児から個人差はありますが、小学校低学年頃までに作られますので、それまでの間はフッ素を正しく使用し、摂取量に注意する必要があります。

骨フッ素症は骨硬化症と言われ、インドや中国などフッ化物濃度が高い飲料水を使用している地域で、毎日、適量よりも多いフッ化物を何十年と摂取した場合に見られる骨の病気ですので、日本で起こることはまずありません。


フッ化物による中毒、死亡事故


このように書くと少し怖がらせてしまうかもしれませんが、これまでに世界で起こったフッ化物に関連した死亡事故は、歯磨き粉の使用によるものではありません。

小麦粉と間違えて使用された粉末製剤によるものや、洗口剤やタブレットの誤飲、水道水へのフッ素添加装置の故障によるものなどです。

しかし、乳幼児など小さい子供には注意が必要ですので、高濃度のフッ化物配合の歯磨き粉や洗口剤は手の届かない場所に保管して下さい。

【表】
この表は体重20kgの5歳児で計算されたものです。



少し分かりやすくお話すると、子供用歯磨き粉でよく使われているチェックアップ・コドモ500は500ppmで60g入っていますので、この歯磨き粉1本分を一気に摂取すると急性中毒になることになります。
ですので、通常ではこのようなことは起こりにくいと考えられます。


フッ化物を大量に摂取してしまった時の対処法


急性の中毒の場合には、腹痛や嘔吐、下痢などの症状が出ます。

フッ化物は胃ですぐに吸収されますので、すぐに牛乳を飲んで中和します。

大量に摂取してしまった場合には、胃洗浄や点滴での対応が必要になることもありますので、すぐに病院へご連絡下さい。


フッ化物とアナフィラキシーショック


子供用歯磨き剤のチェックアップ・コドモA(グレープ、ストロベリー、アップル)の使用後に、アナフィラキー症状が出た事例が3件あります。

いずれの症例も、食物アレルギーや喘息の既往があるお子様で、症状は一過性であり既に回復されているようです。

フッ素は、『虫歯予防と削らず治す虫歯治療に重要なフッ素の話』でもお話しましたが、フッ化物は自然界に広く分布し、私たちが日常で摂取している飲食物(お茶、海藻、魚や野菜など)にもフッ化物は多く含まれています。

そこから考えると、アナフィラキシーの原因がフッ素であるとは考えにくいとは思われます。
実際に、この事例でのアナフィラキシーの原因は、フッ化物との因果関係は不明とされています。

ただし、食物や医薬品などでアレルギーをお持ちの方 、 喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、アナフィラキシーなどアレルギー疾患をお持ちの方は、十分にご注意下さい。


まとめ


今回は、フッ化物のマイナス面についてお話させて頂きましたが、フッ化物は正しく使用すれば、虫歯のコントロールに大きな効果を発揮します。

また、フッ化物ではなく、元素としてのフッ素は猛毒として知られていますが、フッ素が元素単体で存在することはありませんので、ご安心頂ければと思います。

それでも、どうしてもフッ化物を使用したくないという場合には、毎日の歯磨きの徹底や、糖の摂取、食事の取り方、定期的なメンテナンスなど、フッ化物を用いずに虫歯のコントロールを行う事も可能だと考えられますので、お近くの歯科医院にご相談して頂ければと思います。

次回は、『フッ素を使用した製品の選び方と使用の考え方』についてお話したいと思います。


戻る