都立大学萩尾歯科クリニック
                   
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Dr.HAGIO's 歯科ブログ

フッ素を使用した製品の選び方と使用の考え方

【監修・執筆】 萩尾 信輔
【監修・執筆】 萩尾 信輔 都立大学HAGIOデンタルクリニック院長・歯科医師

前々回の『虫歯予防と削らず治す虫歯治療に重要なフッ素の話』では、フッ化物の歴史やその働き、利点についてお話させて頂き、前回の『フッ化物製品を使う前に知っておきたい注意点』では、フッ化物のマイナス面についてお話しました。

そして、今回は、その二つの内容をふまえた上で、実際にはどのようなフッ化物製品を選択し、どのように使用するのかについてお話していきたいと思います。

 

 

フッ化物の濃度別用途

低中高の濃度別に大きく分類した場合の、フッ化物の用途例です。

低濃度:地域社会で提供(飲料水、塩、牛乳や小麦粉などに添加)
中濃度:個人による使用(歯磨剤、洗口剤、タブレット、あめ、ガムなど)
高濃度:専門家による使用(溶液、ジェル、フッ化物徐放歯科材料、バーニッシュ)

この中でも、歯磨き粉は研究の数も多く信頼性がもっとも高いです。
個人による虫歯予防に適した身近な製品としては、まずはフッ化物配合歯磨剤の使用が良いと考えられます。


歯磨き粉に含まれているフッ化物の種類と特徴

日本で歯磨き粉に配合されているフッ化物には、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズなどがあります。

フッ化ナトリウムは、素早く溶け、フッ化物イオンを放出します。
カルシウムや水酸化アルミニウムなどの研磨剤と反応すると、フッ化物イオン濃度が下がる特徴があります。

モノフルオロリン酸ナトリウムは、唾液やプラークが持つ酵素と反応し、フッ化物イオンが徐々に放出されます。
血中にも吸収されにくい特徴があります。

フッ化第一スズは虫歯抵抗性や抗菌性がありますが、スズイオンにより歯に着色することがあります。

これらの中では、フッ化ナトリウムが最も使用されています。


歯磨き粉のフッ化物濃度について

フッ化物濃度の上限は国によって異なりますが、歯磨剤では1000ppm~1500ppmが一般的です。

『ppm』とは、液体の微量な濃度を示す際に用いられる単位で、百万分の1を表します。
ですので、1000ppmとは0.1%の濃度のフッ化物が含まれていることを表しています。

フッ化物の効果を得るにはフッ化物配合の歯磨剤で磨き、口の中にフッ化物がある状態を保つ事が重要です。
フッ化物配合歯磨き粉の虫歯予防効果は、歯磨き粉を使用しない状態に比べると、フッ化物濃度1000~1250ppmで約23%、1450~1500ppmで約30%の虫歯予防効果が上昇します。

また、1500ppmは1000ppmより虫歯予防効果が10%近く高くなります。

フッ化物は歯ブラシが届きにくい部位にも有効なので、用法、用量を守り、子供から高齢者まですべての年代に利用していただきたい予防法の一つです。


実際の歯磨き粉の使用量について

萌出したばかりの歯は虫歯になりやすい為、フッ素による効果的な虫歯予防を行いたいところですが、体重あたりのフッ化物濃度が多くなるため、歯牙フッ素症のリスクを考える必要があります。

特に、3歳までは体重も少なくフッ素症の影響で前歯に影響が出やすいため、フッ化物の摂取量には注意が必要です。
また、6歳~15歳までは虫歯のリスクが非常に高いため、フッ化物による虫歯予防を期待したいです。

フッ化物の使用量については、様々な考え方があるため、正解を書くことが難しくなっていますが、おおよその推奨量を書かせていただきます。

当院で使用している、以下の歯ブラシと歯磨き粉を用いてお話します。


2歳以下 歯ブラシに薄くつける



6歳未満 


6〜14歳 歯ブラシの半分位(ブラシが上記の物よりも長くなっています)


15歳以上



今回は全て950ppmのフッ化物濃度の物を使用していますが、6歳以上は1500ppmを推奨する考え方もあります。

 

歯磨き後のうがいの仕方

歯磨き後にコップを使って口をゆすぐ子供よりも、手を使って少ない水で口をゆすぐ方が、虫歯の増加率が低いという研究があります。

フッ化物は、口の中に残り続けることで、虫歯の予防効果がありますので、歯磨き後は強く口をゆすがずに、軽く1回ゆすぐ程度で良いと思われます。


まとめ

フッ化物は、歯を削らない治療を行う上でとても有効ですが、虫歯が進行している活動性の虫歯は、清掃器具や唾液が届かない状態のままだと非活動性にすることはできません。

そのような場合には、やはり従来通り虫歯を削って治す治療が必要になります。
このことを考えると、歯磨きやフッ化物の応用により、虫歯を予防することが、実は一番の歯を削らない治療なのではないかと思います。

今回のフッ素に関する3つの記事では、出来る限り考えに偏りがないように書きましたが、基本的には、フッ化物の歯に対しての有益な効果に焦点を当て、フッ化物を推奨する観点から書かせて頂いています。

フッ化物に関しては、様々な考え方がありますので、これらの記事が、皆様がフッ化物を選択される際の手助けになれば幸いです。

今回の記事は、伊藤直人先生の『Caries Book』を元に書かせて頂きました。
私のフッ素に対する知識が十分ではなかったこともあり、再度フッ素に関する知識を分かりやすく学ぶことができ、とても勉強になりました。

ご興味のある方は、是非読んで頂ければ、より虫歯に対する知見が広がると思います。
この本を歯科医師、及び歯科衛生士と共有し、地域の虫歯予防につなげていきたいと思っております。


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