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Dr.HAGIO's 歯科ブログ

歯茎のホワイトニング?ガムピーリングについて

【監修・執筆】 萩尾 信輔
【監修・執筆】 萩尾 信輔 都立大学HAGIOデンタルクリニック院長・歯科医師

ご自身やご家族、友人などの、歯茎の着色が気になったことはございませんか?

今回は、『知って安心!歯茎に起こる着色の種類と原因』でお話した中でも、比較的多く見られるメラニン色素沈着について、その原因と治療方法、原理を交えながら詳しくお話していきたいと思います。

また、治療方法においては、歯茎の着色を取り除くガムピーリングを、ケミカルピーリングとレーザーピーリングに分けてお話していきたいと思います。

 



歯茎の着色メラニン色素沈着とは

歯茎には皮膚と同様にメラニン色素を産生するメラニン産生細胞が存在します。

メラニン産生細胞が外来刺激を受けると組織を守ろうとし、メラニン色素を産生します。
それにより歯茎の一部が茶色く着色して見えるようになります。

これは、日光の紫外線で皮膚が黒くなるのと同じ原理です。

メラニン色素沈着の原因

口呼吸、紫外線、タバコ、受動喫煙、などが外来刺激として挙げられます。
また、先天的な色素沈着も原因の一つとして挙げられます。

*なぜメラニン色素が原因で歯茎が着色するのか、その原理は?
メラニン産生細胞はメラノサイトや色素細胞とも言われています。
皮膚や粘膜などの表皮細胞の8%がこのメラノサイトで残りの約90%がケラチノサイトと言われる角化細胞です。

このメラニン産生細胞は、皮膚や粘膜の少し深い部分に存在します。
ですので、普段お口の中の粘膜は皮膚ほど刺激を受けませんので、着色のないピンク色をしています。

言い換えると、着色のないピンク色の歯茎をしている人も、粘膜の深い部分には、歯茎が着色している人と同様にメラニン産生細胞が存在し、外来刺激を受ければ必ず歯茎が着色してきます。

そして、このメラニン産生細胞が刺激を受けて、メラニン色素を作り出すことにより、歯茎がピンク色から茶色に変色します。


歯茎の着色の治療法、歯茎のホワイトニング(ガムピーリング)

ガムピーリングは色素沈着した歯茎を一層剥ぐことで、綺麗なピンク色の色調を改善する治療法です。
方法は薬剤で治療するケミカルピーリングと、レーザーで治療するレーザーピーリングの2種類があります。

ケミカルピーリング

フェノール法とも呼ばれ、タンパク質変性作用のあるフェノールを着色した部位に塗布し、歯肉の表層を一層剥ぎ、歯肉の着色を除去します。

ケミカルピーリングの治療の流れ

1.処置前の状態記録写真撮影
2.表面麻酔の塗布
3.フェノール及びエタノールの薬液塗布
(塗布後は速やかに歯茎が白く変色する)
4.約3日後には歯肉は一層剥がれ、徐々に正常なピンク色になってきます
5.約1〜2週間後には綺麗なピンク色の歯茎の色調へ変化します


ケミカルピーリングの実際

・術前の口腔内写真

 

・術中の口腔内写真(歯茎が白く変色しています)

 

・術後1週間後の口腔内写真(若干の赤みは残っていますが歯茎の着色がなくなっています)

歯茎の赤みは徐々になくなり、綺麗な歯茎に戻ります。


*なぜ歯茎の着色した部位のみがなくなり、元の綺麗な歯茎に戻るのか?
ケミカルピーリングで用いられるフェノールには、タンパク質変性作用と不溶化される作用を持っており、分かりやすく言うとタンパク質を取り除く効果があります。

そして、メラニン色素はグロブリンと言われるタンパク質と結合しています。
ですので、フェノールにより、グロブリンが取り除かることにより、着色部位が反応を起こし白くなります。

ただし、フェノールが着色部位以外の粘膜に影響を及ぼしていないわけではありません、実際には化学火傷などが起こる可能性があり、使用方法を誤ると危険ですので、取り扱いや施術には十分に注意する必要があります。

もしも化学やけどが起こった場合には、大量の水で洗い流し、通常の火傷に準じた対応を行います。

レーザーピーリング

レーザーを用いたガムピーリングの方法は2種類あります。

1つはメラニン色素の光の吸収波長でレーザー照射を行います。メラニン色素に吸収されたレーザーは、色素破壊を行い、それにより着色を除去する方法です。

2つ目はレーザーの光を収束させ、熱に変えることにより、歯茎の表面に沈着したメラニン色素を薄く剥ぎ取ります。
そうすることにより、歯茎の表面の着色を除去する方法です。

レーザーピーリングの治療の流れ

1.処置前の状態記録写真撮影
2.表面麻酔の塗布
3.レーザー照射
4.数週間で歯茎の色の改善が見られます
(使用するレーザーの種類により、治癒の経過や時間が異なります)

ケミカルピーリングとレーザーピーリングの違い

着色の範囲が広く、色が濃い場合にはケミカルピーリングの方が効果が高いためお勧めしております。

ただし、歯間乳頭と言われる歯と歯の間の三角形の歯茎の部分にケミカルピーリングを行うと歯肉退縮のリスクがあるため、歯間乳頭部が気になる場合にはレーザーピーリングをお勧めします。

ガムピーリング後、後戻りはしないのか?

前述したように、フェノールはメラニン色素に作用し、メラニン産生細胞には直接作用しません。

ですので、再度粘膜に刺激が加わり、メラニン色素が産生されれば再び歯茎は着色してきますので、後戻りは起こります。

ですが、口腔内は通常皮膚に比べて刺激が少ないですので、短期間で元の着色まで戻ることは少ないと考えられます。

ガムピーリング時に知っておきたい注意点

・数日間、元々着色していた部位が白く変色する
・施術後の数日間、治療した部位がピリピリと痛む事があるため、刺激の強い食事は控える必要がある
・フェノールやアルコールにアレルギーのある方はケミカルピーリングは出来ない
・歯茎が薄い方や歯肉退縮がある方は歯茎が退縮する可能性がある
・歯肉炎や歯周炎で歯茎に炎症のある方は、歯周治療により歯茎の炎症を改善後に施術を行う
・メラニン色素沈着以外の歯茎の着色には、ガムピーリングの効果がない
・タバコや口呼吸などにより後戻りする可能性がある

まとめ

今回は着色の原因や原理、ガムピーリングのメカニズムについてお話させて頂きました。

以前は、カーボランダム法といって、歯茎に麻酔を行い、着色部位を直接削り取る方法がありましたが、現在では行われておらず、より侵襲の少ないケミカルピーリングもしくはレーザーピーリングが主となっています。

歯茎の着色が気になった場合には、まずは歯茎の着色の原因を診査、診断します。
その上で、着色に対する治療方法を選択していきます。

メラニン色素沈着の場合には、施術にかかる時間やダウンタイムも短いですので、歯茎の色が気になった場合にはお近くの歯医者さんに相談してみて下さい。

歯茎の着色や歯茎のホワイトニングメカニズムについては、少し難しい部分もあったかと思いますが、どういう原理で治療を行っているのかを知ることにより、より安心して治療を受けることが出来ると思いお話させて頂きました。

最後まで読んで頂きありがとうございます。


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