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Dr.HAGIO's 歯科ブログ

知って安心!歯茎に起こる着色の種類と原因

【監修・執筆】 萩尾 信輔
【監修・執筆】 萩尾 信輔 都立大学HAGIOデンタルクリニック院長・歯科医師

ご自身やご家族、友人などの歯茎の着色が気になったことはございませんか?

一口に歯茎の着色といっても、その種類や原因、着色ができる部位などは様々です。

そこで今回は、一般的な歯茎の着色から、一般的な着色と似ているが、気を付けるべき全身の精査を行う必要がある口腔粘膜疾患についてお話していきたいと思います。

また、一般的な着色の除去、治療方法については、今後のブログにて、それぞれの着色の種類に応じて詳しくお話しさせて頂きたいと思います。

 

 


歯茎の着色の種類と原因

メタルタトゥー

外来性色素沈着とも呼ばれ、歯科治療の過程において、金属の破片が歯茎に付着し、それにより歯茎の一部が黒く変色した状態を指します。

メタルタトゥーの原因

金属は水や水溶液中で陽イオンになろうとする性質があります。

これをイオン化傾向と言います。
この性質により、歯茎に付着した金属片が陽イオンになり歯茎の中に溶け出すと、歯茎に入れ墨が入ったように歯茎が変色します。

出典元 クインテッセンス出版株式会社 『臨床で遭遇する口腔粘膜疾患に強くなる本』 

 

ブラックマージン

メタルタトゥーとは異なり、直接歯茎が変色している状態ではなく、セラミックなどの被せ物のフチや歯茎が黒く見える状態のことを言います。
原因は複数考えられます。

 

ブラックマージンの原因

・歯茎が下がることにより、被せ物の境目が露出し、歯の根が直接見えるようになったことによるもの
・メタルセラミック、硬質レジン前装冠など、内面に金属を使用した被せ物を行っている場合に、その金属が見えるようになったことによるもの
・歯茎の厚みが薄い場合などに、着色した歯の根の色や内面の金属が歯茎を透けて黒く見えることによるもの

*メタルタトゥーとブラックマージンの除去、治療方法については別記事にてお話させて頂きます。

メラニン色素沈着

歯茎には皮膚と同様にメラニン色素を産生するメラニン産生細胞が存在します。

メラニン産生細胞が外来刺激を受けると組織を守ろうとし、メラニン色素を産生します。
それにより歯茎の一部が茶色く着色して見えるようになります。

これは、日光の紫外線で皮膚が黒くなるのと同じ原理です。

メラニン色素沈着の原因

口呼吸、紫外線、タバコ、受動喫煙、先天的な色素沈着などが外来刺激として挙げられます。

 

なぜメラニン色素が原因で歯茎が着色するのか、その原理とは?
メラニン産生細胞はメラノサイトや色素細胞とも言われています。皮膚や粘膜などの表皮細胞の8%がこのメラノサイトで残りの約90%がケラチノサイトと言われる角化細胞です。

このメラニン産生細胞は、皮膚や粘膜の少し深い部分に存在します。
ですので、普段お口の中の粘膜は皮膚ほど刺激を受けませんので、着色のないピンク色をしています。

しかし、このメラニン産生細胞が刺激を受けて、メラニン色素を作り出すことにより、歯茎がピンク色から茶色に変色します。
この原理はメラニン色素沈着による着色を落とす方法である、ガムピーリングを行った後に、再度着色してくるのかどうかにも関わっています。

ガムピーリングによる着色の除去、治療方法については『歯茎のホワイトニング?ガムピーリングについて』でお話させて頂きたいと思います。

メラニン色素沈着症

メラニン色素沈着とメラニン色素沈着症は、名前は似ていますが実際にはメラニン色素沈着症は悪性化する可能性もあり、全身の精査が必要になりますので、注意が必要です。

好発部位は口腔粘膜、唇、顔の皮膚でメラニン色素の過剰沈着により黒褐色や茶褐色の平坦または帯状の色素斑を生じます。

自覚症状はなく、原因不明ですが、Addison病、Peutzj-eghers症候群、Von-Recklinghausen病、McCune-Albright症候群の部分症状として現れるので全身の精査を行う必要があります。

色素性母斑と同様に悪性化することもあるので経過観察が必要です。

出典元 クインテッセンス出版株式会社 『臨床で遭遇する口腔粘膜疾患に強くなる本』 

血管腫

好発部位は舌、口唇、頬粘膜で、元々ある血管が変形、増殖し、血管の塊を作る病変です。

お口の中では、粘膜が薄いため、血管が透けて見えるような状態で、暗い紫色、青色をしています。
血管腫は、お口の中以外に皮膚にも発生する病変で、『赤あざ』とも呼ばれているようです。

血管腫の治療方法

大きさによって治療方法が分かれ、レーザー照射、外科的切除、組織硬化療法などが挙げられます。

 

色素性母斑

好発部位は口腔粘膜で通常、直径5mm程で丸い形をした黒い斑点で1~数個みられることがあり、いわゆる黒子(ほくろ)です。

良性疾患で自覚症状はなく、外来性色素沈着(メタルタトゥー)とは違うため、金属の被せ物と関係のない場所の場合は、この色素性母斑を疑います。

色素性母斑の治療方法

一度大学病院にご紹介後、悪性化することがあるので、切除する場合もあります。

出典元 クインテッセンス出版株式会社 『臨床で遭遇する口腔粘膜疾患に強くなる本』 

悪性黒色腫

好発部位は頬粘、歯肉、舌、口蓋で、ほくろ状の黒色変化を示すものです。

悪性黒色腫の原因

メラニン色素産生細胞(メラノサイト)の腫瘍性の増殖による悪性疾患です。

特徴としては左右が非対称、輪郭がギザギザしていて、色が均一でなく、直径が6mm以上、短い間に大きさが大きくなったり、色・形・症状が変化したりします。

予後は非常に悪く、短い間に浸潤し、多臓器に衛生転位をきたします。
その中でも肺転位が多いです。

自覚症状はあまりなく、腫瘍が大きくるなるに伴い、痛みや出血が出易くなります。

悪性黒色腫の治療方法

大学病院にご紹介後、精査、加療となります。

出典元 クインテッセンス出版株式会社 『臨床で遭遇する口腔粘膜疾患に強くなる本』 

血腫

組織内で出血したものが固まってて、血の塊を作ったものです。

血腫の原因

外傷、特に頬などを誤って咬んでしまったことなどにより、発現します。
いわゆる『血まめ』で、自然になくなりますので治療の必要はありません。

*血腫も大きものだと、このような状態になります。

出典元 クインテッセンス出版株式会社 『臨床で遭遇する口腔粘膜疾患に強くなる本』 


まとめ

今回は、歯茎や舌に見られる着色、および鏡などで比較的認識し易い色の着いた病変に着いてお話させて頂きました。

メタルタトゥー、ブラックマージン、メラニン色素沈着は審美的な側面を除くと、大きな病気ではありませんが、治療によって見た目を改善することが出来ますので、今後のブログ記事にてお話させて頂きたいと思います。

また、お口の中に出来る『ほくろ』は要注意です。
色素性母斑、悪性黒色腫の可能性がありますので、疑わしい場合には、症状がなくても、早い段階での歯科の受診をお勧めします。

今回の記事は、『臨床で遭遇する口腔粘膜疾患に強くなる本』の内容を参考に書かせて頂きました。
写真付きで非常に分かりやすく書かれていますので、ご興味のある方は読んで頂ければと思います。

それでは、最後までお読み頂きありがとうございました。

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