都立大学萩尾歯科クリニック
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Dr.HAGIO's 歯科ブログ

知覚過敏を深く知る

【監修・執筆】 萩尾 信輔
【監修・執筆】 萩尾 信輔 都立大学HAGIOデンタルクリニック院長・歯科医師

今回は、医療従事者よりの内容になりますが、なぜ知覚過敏が起こるのか、どのような理由で知覚過敏抑制剤を選択しているかについて、もっと深く知りたいという方は、ご覧いただければ知識が深くなると思います。

どのようにして知覚過敏が起きているのか

知覚過敏とは(正式名:象牙質知覚過敏症)

何らかの原因で通常はエナメル質や歯肉などに守られている象牙質に刺激が加わり、それによって発生する症状のことを指します。

象牙質には象牙細管といわれる管があり、その中に組織液が満たされており歯の神経とつながっています。
そう考えると、咬耗や歯肉退縮によって象牙質が露出するということは、半分神経が出ているようなものだということが分かります。

いかに元々の歯や歯肉の状態を維持する事が大切か分かります。
さらに象牙質はエナメル質の8倍ほど柔らかく、削れ易いのでそのままにしておく事がとてもリスクの高いことだとお分かり頂けるかと思います。

どのようにして知覚過敏が起こるのか

動水力学説という考え方が有力ですが、それだけでは説明が難しい部分もあるため、動水力学説を中心とした「多元説」として考える方が良いのではと言われています。
はっきりとした理由は分かっていないという事です。

ですので、知覚過敏の処置は難しく様々な要因を考え、低侵襲治療から行っていくべきだと考えています。

動水力学説とは

下図のように開口した象牙細管に加えられる刺激により、象牙細管内の組織液の流れが急激に変化して細管内の圧の変化が起こります。

この圧の変化により神経や象牙前質に分布する神経細胞を興奮させて痛みを発生させます。
(引用:医師薬出版 象牙質知覚過敏症)


治療方法

原因の除去

これは当たり前のようですが意外に軽視されている場合もあります。

しかし、医療においては原因を正確に診査、診断しその原因を除去する事が最も重要です。

原因を除去しなければ、どんな歯磨き粉や知覚過敏抑制剤を使っても、改善しないか、改善してもまた再発してしまいます。
知覚過敏においては、原因の除去だけで症状が改善する事も珍しくありません。

原因の除去の一つが『これで解決!知覚過敏の治し方とセルフケア』でお話した個人でのセルフケアです。
それ以外には、噛み合わせや不良修復物、虫歯等の原因に応じて対応していきます。


知覚過敏抑制材の塗布

知覚過敏抑制材の塗布は低侵襲で簡便なため、知覚過敏症の第一選択として用いられます。

しかし、知覚過敏抑制材には多くの種類があり、その作用機序(どこに薬が効果をもたらしているか)もそれぞれ異なります。
その作用機序を理解することが治療の効果に大きく影響するため、そこを少し詳しくお話しています。

・象牙細管を封鎖する『蓋』
・感覚を鈍くする『鈍麻』
・組織液のタンパク質を凝固させ、動かないようにする『凝固』

大きく分けるとこ3つの種類に分けられます。

抑制材は、鈍麻→凝固→蓋の順番に行う

鈍麻:主に知覚過敏抑制材に入っているカリウムイオンが知覚過敏に良い
凝固:組織固定液のグルタールアルデヒドやHEMA
蓋:スーパーシール塗布、ティースディセンシターザー等で蓋をする
蓋2:レジン、グラスアイオノマーで蓋をする
(下図参照)

この順番で行うべきである。


ここから分かるように、材料の性質を理解しないとそれぞれの抑制剤がお互いの効果を打ち消してしまい、結果として知覚過敏が治らなくなってしまいます。
そのため、当院では、この考えに乗っ取って抑制材の塗布を行っています。


歯肉移植術

知覚過敏だけでなく審美的にも困っている場合、蓋2のレジン充填(知覚過敏の原因と思われている歯の一部の封鎖)を行う前に行う。
蓋2でのレジン充填は防湿(唾液などの水分を排除する方法)等の手技を確実に行わなければ、更なる退縮、知覚過敏を促すため、それを行う前に考慮すべきと考える。

まとめ

知覚過敏は、現在悩んでいる人が多く治療方法も多岐にわたりますが、一番大事な事は診査・診断を正確に行い原因を除去し低侵襲な治療から行うことだと考えます。

今回のブログの内容は医歯薬出版、象牙質知覚過敏症という本を参考に書かせて頂きました。
非常に分かりやすく、臨床にも落とし込みやすい内容です。
ご興味のある方は是非ご一読して頂ければと思います。


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