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Dr.HAGIO's 歯科ブログ

本当は怖い!ドライマウスが起こす問題と対応法

【監修・執筆】 萩尾 信輔
【監修・執筆】 萩尾 信輔 都立大学HAGIOデンタルクリニック院長・歯科医師

最近よく口が乾くといった症状をお持ちの方はいらっしゃいますか?
ドライマウスは単に『口が乾く』というだけでなく、口の中の様々な症状を引き起こします。

日本のドライマウスの患者さんは、推定で800万人、潜在的には3000万人いると言われています。
潜在的には5人に1人がドライマウスと考えると見過ごすわけにはいきませんね。

結論からお話すると、ドライマウスを根本から改善することは難しい場合が多いです、ですがドライマウスを知り、対処することにより、ドライマウスによって引き起こされる二次的な問題を改善することができますので、是非ご一読頂ければと思います。

 


ドライマウスとは


さまざまな原因により主に唾液の分泌量が少なくなり、口の中が乾燥状態になること、口腔乾燥症とも言います。

ドライマウスの主な症状

・口が乾く
・口が乾いて話しにくい
・食事の時に飲み物が必要
・夜間に水を飲むために起きる
・舌がひび割れやすく、口角炎を起こし易い

こちらの中で該当項目が一つでもあれば、ドライマウスの可能性があると考えられます。

 

ドライマウスの原因


薬の副作用

ドライマウスの原因の中で最も多いのは、処方薬によるものです。
一般的な処方薬の80%はドライマウスを引き起こす事が報告されており、400種類以上もの薬が副作用としてドライマウスを引き起こす事が知られています。

唾液腺そのものの異常

唾液腺管の感染、唾石などのによる導管の閉塞、腫瘍など。

全身疾患

シェーグレン症候群、慢性腎不全、肝炎、糖尿病、リウマチ、全身性エリテマトーデス、脱水症、脳血管障害など。

ストレス

唾液を分泌する唾液腺は自律神経に支配されおり、緊張するとサラサラの唾液の分泌が止まり、ネバネバした唾液が少量分泌されます。

ストレスが蓄積することにより、交感神経が優位になり、ドライマウス状態が続きます。
また、ストレス社会において抗うつ薬を服用されている方は多く、そのような方の場合には、抗うつ薬による副作用もドライマウスに関与しています。

サルコペニア

加齢に伴う骨格筋の量や筋力の低下のこと、唾液腺の周囲は大きな筋肉によって囲まれており、唾液分泌時に唾液腺を刺激しています。
このことから、唾液の分泌を妨げられると考えられています。

口呼吸

口の周りの筋肉が弱く、気づくと口が空いてしまっている、花粉症などのアレルギーのため口で呼吸する機会が増えているなど、お口を閉じて鼻で呼吸することが難しいと、お口の中が乾燥してドライマウスを引き起こします。
また、抗アレルギー薬もドライマウスを引き起こします。


ドライマウスによって引き起こされる症状

虫歯の発症、進行、再発の増加

唾液腺機能の低下が持続した場合、唾液の中和作用が機能しないため、お口の中のpHを中性に維持することが出来なくなり、虫歯になり易くなります。

唾液が少ない場合には、細菌が集まりやすいため、細菌の出す酸によって虫歯が発症、進行し易くなります。
唾液に含まれている成分により起こる歯の再石灰化が出来ないため、毎日の歯ブラシによる摩耗の進行や歯の傷の修復が難しくなります。

このように、虫歯のリスクが高くなりますので、注意が必要になります。

歯肉炎、歯周病の悪化

唾液腺機能の低下により、磨き残し、プラークが残存しやすくなるため、歯肉炎、歯周病のリスクが高くなると考えられます。
しかし、唾液機能低下を示す方は虫歯関連菌を多く有していたが、歯肉の炎症に関連する菌は健常者と同程度であったとの報告もあります。

歯肉炎、歯周病のリスクは高くなるが、虫歯のリスクの方が注意が必要です。

入れ歯の不適合

唾液は、入れ歯の吸着の向上、安定、粘膜の傷や疼痛の緩和の役割を担っています。
そのため、唾液腺機能低下により、入れ歯による疼痛により食べ物の摂取困難が起こる場合が起こります。

味覚異常

唾液は食べ物を溶解し、味覚を誘発する物質の運び役となるため、唾液の分泌異常により、味覚異常が生じやすくなります。

口臭

唾液の減少し、お口の中が乾燥することにより、より口臭が発生し易くなります。
(口臭に関しては、他にも様々な原因がありますので、ご興味のある方は、口臭の記事も合わせて見て頂ければと思います。)

食べる機能の低下

唾液と食べ物が混ざり合い、食塊となり、飲み込み易い形になります。
そのため、唾液機能の低下により、食事がしづらく、飲み込みにくくなり、誤嚥性肺炎までも引き起こすことがあります。
また、食べ物の摂取困難や味覚異常により飲食物の選択が変わり、栄養状態の悪化を招きます。

微生物による感染症

唾液が減少し、唾液の自浄作用が低下すると、口腔内が酸性に傾きます、真菌の一つであるカンジダ症は酸性状態で発育を繰り返すため、カンジダ症に罹患しやすくなります。

肺炎

肺炎は夜間、無意識のうちに進行するといわれています。
ドライマウスにより夜間の微生物が増殖した状態が継続すると、肺炎が生じやすくなります。

 

ドライマウスの当院での検査法

当院でのドライマウスの検査法の手順と具体的な検査方法。

・視診
口腔内の湿潤状態を評価します

・安静時唾液テスト
無刺激状態の15分間に何ml分泌したか

・ガムテスト
ガム咀嚼刺激状態の10分間に何ml分泌したか

・サクソンテスト
ガーゼ咀嚼状態の2分間に何gの唾液がガーゼに染み込んだか

 

ドライマウスへの対応法

人は1日に1~1.5ℓの唾液を分泌するといわれています。
しかし、1日中いつも定量が分泌されているわけではなく、日中には活発に唾液分泌され、夜間には分泌量が減少します。

前述したようにドライマウスは複数の原因が重なって生じている場合が多いため、正確に原因を把握し、原因を除去できそうなものはなるべく除去し、困難な場合には対症療法を行います。


保湿剤

原因に関わらず保湿剤の使用をお勧めします。

保湿剤を配合した洗口液、ジェル、スプレー、人工唾液などがあり、自分に合ったものを使用すると良いです。
保湿剤を使用する時は、まずはうがいをするか、水やお茶で口腔内を潤して下さい。

特にジェルは吸水作用があるため、乾いた状態で使用すると、口の粘膜から水分を吸収し、より乾いた状態になりますのでご注意ください。

保湿剤は継続することが重要です、継続することで組織に刺激を与え口腔機能の維持や唾液分泌を助けてくれます。
また、夜間は乾燥しやすく、口腔内の菌も増殖するため、寝る前の口腔ケアや保湿を行いましょう。


唾液腺、口腔粘膜マッサージ

保湿剤だけでは効果が限られますので、口腔内を潤したらマッサージにより唾液腺を刺激してお口の中を保湿しましょう。


マッサージ方法

用意するものは保湿ジェルだけです、ご自身の指を用いて行います。
口の粘膜は繊細ですので、爪等で傷つけないように注意して下さい。


上顎及び舌の周りのマッサージ 

・うがいで十分に口の中を湿らせます。
・保湿ジェルを人差し指に1~2cm程とります。
・舌の表面をゆっくりとマッサージします。
・舌の奥、付け根の所も小唾液腺がありますので刺激するようにマッサージします。
・上顎の内側は口蓋腺という小唾液腺があるので同様にマッサージします。
・舌の下には舌下腺がありますのでこの部分もマッサージします。
1回10秒3回ほど繰り返してください。


頬粘膜のマッサージ

片方の手で耳の下の手前あたりを顔の外から押すようにして、もう片方の手で頬の内側をマッサージします。
ここからはサラサラした唾液が出てきますので、1回20秒を5回ほど丁寧に刺激して下さい。


唇と歯茎の間のマッサージ

唇と歯茎の間に指を入れて、円を描くように全体的にゆっくり30秒ほどマッサージします。


まとめ


ドライマウスは高齢者の方に多く見られますが、薬を複数飲んでいる場合や、学校生活や社会生活でのストレスにより、最近では、小児や若い方でも比較的多く見受けられます。
ですので、医療従事者から保護者の方、介護をされている方まで、ドライマウスについて知って頂くことで虫歯や歯周病、感染症などのリスクを軽減することが出来ます。

今回の内容は、当院の歯科衛生士にも非常に為になる内容になりました、日々学ぶ事を怠らず少しでも皆様のお口の環境の改善にお役に立てればと思いますので、今後とも宜しくお願いします。
最後まで読んで頂きありがとうございました。


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