親知らずは必要ないの?
歯医者さんに行ったら親知らずがある事を指摘され、虫歯や歯周病の原因になるので抜歯を勧められた。
そのようなご経験はありませんか?
今回は、抜歯を勧められる事が多い親知らずが、本当に必要がないのかについてお話させて頂きます。
親知らずとは
親知らずの学名は第3大臼歯(智歯)といい、生えてくる時期が20歳前後ということが語源のようです。
日本の親知らずの萌出率はアジアの中では比較的少なく、欠損率は高いようです。
それでも、実際には多くの方に歯茎の中に埋まっているか、少しだけ頭を出しているような親知らずがあることが多いです。
親知らずの進化の歴史
親知らずは元々は大臼歯の中で最も大きい歯でしたが、人類の衣食住の変化に伴う骨格や筋肉の変化に応じて、進化という退化を遂げています。
前歯は物を噛み切る役割、大臼歯は物をすり潰す役割があり、その中でも6番目の第一大臼歯は食事に一番使われる歯で、7番目の第二大臼歯は強い力を受け止めて、6番目にかかる力の負担を減らす役割を持っています。
元々は一番大きかった親知らずが徐々に小さく丸みを帯びた形になってきたのは、親知らずの担う役割が徐々になくなり、健康な生活において実質上、親知らずがなくても差し支えがない事を示唆していると考えられます。
親知らずがあるメリット、デメリット
親知らずがあるメリット
親知らず(第三大臼歯)は、正常に生えていれば抜歯をする必要は一切ありません。
上下の親知らずがきちんと噛み合っていればものを噛むチームの一員として働いてくれます。
そのほかにも、正常に生えている親知らずは、様々な治療に役立ちます。
ブリッジの土台として
歯を失った際に行う治療法のひとつであるブリッジという被せものを作る際の柱のひとつとして使うことができる可能性があります。
この治療法での注意点
ブリッジは奥歯になればなるほどお掃除が難しくなり、再度虫歯になるリスクも高くなります。
大事な6番目の歯を削らなければならないので、状況に応じた治療法の選択が必要だと考えます。
また、親知らずがしっかり生えていても、外側に倒れていて6番目の歯との関係が悪い場合には、この治療法は選択出来ません。
入れ歯の金具をかける歯として
歯を失った際に部分入れ歯を入れる場合、残っている歯の状況や状態に応じて親知らずに入れ歯の金具を引っかけることができます。
部分入れ歯は、失った歯の前後に歯がある場合は、片方にしかない場合に比べて安定感や入れ歯のバネをかける歯への負担が全く違い、親知らずが残っていた方が有利な場合が多いです。
歯を失った部位に移植するドナー歯として
歯を失った際に親知らずを移植する手術を行うことができる可能性があります。
今後移植についてもお話させて頂く予定ですので詳細はそちらでお話します。
患者さんの年齢が比較的若く、親知らずの状態がいいなどの条件付きではありますが、親知らずの移植がうまくいけば、ご自身の歯で再度、噛むことができるようになります。
それによりブリッジやインプラントを行う時期を先送りにすることができます。
親知らずがあるデメリット
親知らず及び隣の歯が虫歯、歯周病になるリスクが高くなる
親知らずはきちんと生えていない場合が多く、歯ブラシがどうしても届きづらかったり、生え方によっては歯ブラシが物理的に届きません。
そのため不潔になりやすく、虫歯や歯周病になりやすくなります。
親知らずの周りが全体的に不潔になってしまうため、親知らずだけでなく、その手前の歯まで虫歯、歯周病にしてしまう可能性があります。
他の歯に比べて腫れやすく、腫れを繰り返しやすい
親知らずがしっかりと生えておらず、半分、もしくは一部、しっかり生えていても歯茎が被っているなどの理由により、磨き残しがある場合などに、腫れやすく、一度腫れると体の免疫力が低下した際に腫れを繰り返しやすくなります。
急性炎症時(腫れている時)は抜歯の治癒が遅い、麻酔が効きにくい、炎症が拡大するという理由により、抜歯が出来ません。
そのため、腫れる度に抗生剤や鎮痛剤を飲むことになります。
親知らずを抜いた方が良い場合と抜かない方が良い場合
親知らずを抜いた方が良い場合
・親知らずがしっかり生えておらず、虫歯、歯周病のリスクが高い場合
・腫れを繰り返している場合
親知らずを抜いて、数ヶ月もすれば、抜いたところの歯ぐきは引き締まってきれいに治ってきます。
そうなると歯磨きをしやすくなり、虫歯や歯周病になるリスクを減らすことができます。
親知らずが虫歯になったり歯周病になった場合は、親知らずを抜歯すれば解決しますが、親知らずがあるせいで一生使う必要がある第二大臼歯まで虫歯や歯周病になるのは、非常にマイナスです。
つまり、親知らずを抜くのは親知らずの手前の第二大臼歯を守るというメリットが親知らずを抜かないメリットを上回る場合に抜歯を選択すると良いと思います。
親知らずを抜かない方が良い場合
・しっかり生えていて、隣の歯を虫歯、歯周病にするリスクが低い場合
・ブリッジの土台、入れ歯の支え、移植に将来的に使える、必要になりそうな場合
・完全に骨に埋まっており、今後も悪くなりそうにない場合
・抜くリスクが非常に高い場合
抜く必要がない場合でも、数年後に親知らずが生えてくることにより、リスクが上がれば抜く必要が出てくる場合もありますので、定期的な検診は必ず行いましょう。
まとめ
正常に生えており歯として機能している場合や、噛み合わせなどに問題がない場合は抜歯の必要はありません。
先ほど述べたように状態のいい親知らずはほかの歯がなくなってしまった部位に移植できる可能性があります。
そのため、もうすでにいくつか状態が悪くなりそうな歯がある方へは、多少磨きづらくてもあえて親知らずを抜かないことを提案することもあります。
また、レントゲンで確認した際に親知らずがあごの骨の中に完全に埋まっていて、ほかの歯等に悪影響を与えないときは抜歯する必要はありません。
ただし、状況によっては親知らずを抜歯した方が良い場合も多くありますので、レントゲンで確認し親知らずの状況だけでなく、お口の中全体、及び年齢や全身状態を考慮した上で、抜歯の有無を判断するべきだと思います。
親知らずの抜歯のタイミング等については、『親知らずを抜く前に知っておきたいこと』についての記事をお読み下さい。
今回は親知らずの抜歯が必要かどうかについてお話しましたので、次回は抜歯した親知らずを移植に使う方法や、抜歯後の注意点やドライソケットについてもお話できればと思います。
読んで頂きありがとうございました。