都立大学萩尾歯科クリニック
                   
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Dr.HAGIO's 歯科ブログ

メタルタトゥー及びブラックマージンの治療方法

【監修・執筆】 萩尾 信輔
【監修・執筆】 萩尾 信輔 都立大学HAGIOデンタルクリニック院長・歯科医師

今回は『知って安心!歯茎や舌に起こる着色の種類と原因』の中でもお話した、メタルタトゥー、ブラックマージンと言われる、歯の周りの歯茎や、被せ物とご自身の歯の境目にできる着色や色の違いについて、原因と治療法及び予防法について詳しくお話したいと思います。

この二つは、『歯茎のホワイトニング?ガムピーリングについて 』でお話した、ガムピーリングを用いた治療方法では改善しませんのでご注意頂きたいと思います。

 

 

 


メタルタトゥーの原因と治療方法及びその予防方法


メタルタトゥーとは



歯科治療の過程において、金属の破片が歯茎に付着し、歯茎の一部がこのように黒く変色した状態を指します。
腫脹や疼痛などの炎症症状は伴いません。


メタルタトゥーの原因

金属の土台や詰め物、被せ物を歯から外す際に、通常、歯科医師はその金属を削って、取り除きます。
その際に、削った金属の破片の一部が歯茎に付着します。

通常、ほとんどの金属の破片は洗い流す事が可能ですが、深く歯茎の中に刺さっている場合や、歯茎に炎症がある場合には、組織の中に金属の破片が入り込んでしまいます。

金属には水や水溶液中で陽イオンになろうとする性質があり、これをイオン化傾向と言います。
この性質により、歯茎に付着した金属片が陽イオンになり歯茎の中に溶け出すと、歯茎に入れ墨が入ったように歯茎が変色します。

メタルタトゥーを生じやすい金属は非金属で、中でも特に影響が大きいとされているのが銀イオンです。
現在、保険診療の金属補綴物に用いられている金属材料には銀が多く含まれています。

銀は酸化されて酸化銀になると色が黒くなります。
このため銀はメタルタトゥーを生じやすい金属と考えられています。

一方で貴金属は金属イオンを溶出しにくいためメタルタトゥーを起こしにくいです。


メタルタトゥーの治療方法

メタルタトゥーによる着色の場合には、メラニン色素沈着と異なり、薬剤やレーザーによる着色の除去が出来ない為、直接着色を削りとる必要があります。

また、メタルタトゥーの場合には、金属イオンが歯茎の深くまで浸潤してる場合があり、その場合には、表面の着色を削り取り、表面の傷が治癒した後に、再度、深部の金属イオンを取り除きます。

深部の歯茎を金属イオンと共に取り除くだけだと、歯茎の退縮を招きますので、上顎の内側の歯茎の一部を移植します。
これを結合組織移植術と言います。


メタルタトゥーの予防方法

虫歯や歯が欠けた際に、金属を用いない治療を選択する事により、メタルタトゥーを回避することが可能です。

既に金属を使用した治療を行っている場合には、その金属を治療の為に取り除く際に、必ず金属の破片が出ますので、その時にラバーダムと言われるゴムのマスクを使用する事により、防ぐことが可能です。

ラバーダムを使用した上での金属の除去等を行う方法は、保険外診療になる場合が多いと思われますので、担当の先生にご確認下さい。


ブラックマージンの原因と治療方法及びその予防方法


ブラックマージンとは


 

メタルタトゥーとは異なり、直接歯茎が変色している状態ではなく、このようにセラミックなどの被せ物のフチや歯茎がいくつかの原因により黒く見える状態の事を言います。


ブラックマージンの原因

・歯茎が下がることにより、被せ物の境目が露出し、歯の根が直接見えるようになったことによるもの

・メタルセラミックと言われる、内面に金属を使用したセラミックで被せ物を行っている場合に、その金属が見えるようになったことによるもの

・歯茎の厚みが薄い場合などに、着色した歯の根の色や被せ物の内面の金属が歯茎を透けて黒く見えることによるもの


ブラックマージンの治療方法

歯茎が下がったことによるブラックマージンや被せ物のふちの金属が露出した事によるものの場合には、被せ物を金属を使用しないセラミックに交換し、更に、歯茎の中に被せ物の境目を隠すようにすることで、より審美的な被せ物を行いブラックマージンを改善する事が可能です。

ただし、歯茎が薄く、ブラックマージンの原因が、歯の根自体が着色により黒く、それが原因で歯茎を透過して黒く見える場合には、被せ物を交換してもブラックマージンは改善しません。

その場合に、どうしても気になる場合には、前述した結合組織移植術により歯茎を厚くする方法もありますが、確実にブラックマージンを改善できる保証がない上に、外科的侵襲も大きいため、あまりお勧め出来ません。

ウォーキングブリーチ法と呼ばれる、歯の中に薬剤を入れて、歯を漂白する方法もありますが、黒くなってしまった根を元の色に戻す程の効果は期待できません。

また、歯を抜くことにより、ブラックマージンをなくすことは出来ますが、歯を抜くデメリットはとても大きいと思われますので、担当の先生との十分なご相談の上、診療方針を決めることをお勧めします。


ブラックマージンの予防方法

ご自身で出来る予防方法は、被せ物と歯茎の境目を強く磨き過ぎないことです。
新しく綺麗な被せ物が入ると、悪くしたくないという気持ちが強くなり、過度に歯や歯茎を磨いてしまう場合があります。

基本的に、適合がよく精度の高いものであれば、セラミックには簡単には汚れはつきませんので、過度なブラッシングは控えて下さい。

被せ物や歯の土台の材質は金属を使用していないものにすることも予防の一つになります。

また、神経が死んだ状態で、症状がない場合にそのまま治療せずに放置することにより、歯自体が徐々に黒く変色してきますので、神経が死んでしまった場合には、症状がなくても根管治療を行うことをお勧めします。


まとめ

メタルタトゥー及びブラックマージンは、前歯に起こると目立ちやすく、場合によっては強い審美障害を起こします。

メタルタトゥーの原因は金属の切削片ですので、金属を使用しないことが一番の予防方法となります。
既に金属で治療されている歯の治療を行う際には、金属片が歯茎に刺さってメタルタトゥーにならないように、歯科医師が十分に配慮する必要があります。

これには、歯科医師のメタルタトゥーへの知見が必要となります。
一度メタルタトゥーによる変色が起こると、元に戻すために外科処置が必要になりますので、メタルタトゥーにならないようにする事が最も重要と考えます。

ブラックマージンの場合には、被せ物を再治療することによりブラックマージンを改善させる事が可能ですが、やり直しを繰り返すことは、歯を削ることになりますので、出来る限り再治療が少なくなるように、歯ブラシの硬さや、ブラッシング圧、当て方に注意しながらメンテナンスを行って下さい。

また、保険診療で用いられる硬質レジン前装冠は白い部分がプラスチックで出来ていますので、汚れが付着しやすいです。
そのため、歯茎の退縮や虫歯にもなりやすく、プラスチック部分が変色し見た目も悪くなりやすいですので、メリット、デメリットを十分に考えた上で選択されると良いと思われます。

最後まで、お読み頂きありがとうございました。


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